院長ブログ
あごの形と食生活の変化
あごの形は、両親からの遺伝ばかりではなく、
生まれたときからの食生活によって大きく変化します。
食べ物のかたさや形、あるいはよく噛んで食べているかどうかによっても左右されます。
食生活が変わってきたのは、江戸中期、徳川家5代将軍綱吉のころからだと言われています。
この時期は元禄時代で、町人が台頭し、文化的にも栄華を極めた時代でした。
そのころから砂糖が庶民の口に入りだしたし、米が精製米になりました。食事が、
1日2回食が3回食となったのもこの時期です。
徳川家康はエラがはった四角い顔立ちでした。彼は将軍になる前は三河の地方武士であり、食事は質素で、しっかりと噛んでいたようで、特に「1口48回噛んだ」という記録が残されています。彼は頭脳明晰で、
冷静で常に粘り強く、戦国時代に勝利を上げました。
以後徳川家は、代を経るごとに食生活はぜいたくになり、そのために頭骨と顔に変化が見られるようになってきました。
12代将軍家慶の歯を見ると、歯は全くといっていいほどすり減っていず、
食物をよく噛んで食べてはいなかったことがわかります。
毎日毎回よく噛めば、歯の上下のかみ合う表面は少しずつすり減ってくるはずだからです。
14代将軍家茂は、さらにうりざね顔が進み、貴族的な顔立ちとなり、下顎骨が弱々しく、
歯がすり減っていないと同時に、むし歯も多くありました。
彼はやわらかい食べものを好み、魚の小骨まであらかじめ全部とり去られ、さらに甘党であったといわれています。
さて、現代人の顔形の傾向はというと、やはり口元が細いうりざね顔が増加しています。
顔全体が細く、小さく、逆三角形の顔立ちです。そのため口が小さく、
ほとんどが歯並びの悪い乱杭歯となっています。
やわらかい食べ物だけを食べて育ったか、子供時代にむし歯が多くてよく噛めず、噛むための筋肉やあごの発育が遅れたかで、口元の細いタイプの顔ができあがってしまったのです。
この傾向が続くと、人間の顔は、さらに頭が大きく、顎が小さくなり、運動不足で手足の骨も細く長くなってくるでしょう。ちょうど空想上の宇宙人の姿に似てくるのではないでしょうか。